480

電流戦争

事務所

電流戦争

ウクライナ情勢が一段と緊迫しています。ウクライナ国境近くに配備されたロシア軍が一部撤退し始めたとのニュースも流れましたが、依然として今週中にもウクライナ侵攻との観測が飛び交っています。昨日NHKのインタビューに答えたガルージン駐日ロシア大使は「侵攻しないし、人的犠牲も出ないが、軍事技術的措置はある」と発言。軍事技術的措置とは何か、気になります。

1.デザーテック

サハラ砂漠や中東地域に太陽光や風力の発電所を作り、欧州大陸に電力供給するというプロジェクトが2010年代から研究されています。「デザーテック」または「デゼルテック」と呼ばれます。

つまり、デザーテックとは太陽熱や風力を使って砂漠で電力を生み出し、その電力を消費地に送電する技術群を意味します。

世界中の砂漠に降り注ぐ太陽エネルギーは、6時間分で全世界1年分のエネルギー需要に相当するそうです。

サハラ砂漠はほぼ無人であり、欧州に近いことから、このプロジェクトによって、北アフリカと欧州に電力需要に対応するとともに、欧州経済が温室効果ガスの排出規制範囲内でも十分に成長できる経済環境が構築可能と考えられています。

このプロジェクトの発端はローマクラブです。ローマクラブについては、過去のメルマガ(419号、452号、466号)を参照してください。

2003年、ローマクラブとヨルダン国立エネルギー研究センターがドイツにTREC(Trans-Mediterranean Renewable Energy Cooperation)という組織と、非営利団体のデザーテック財団(DESERTEC Foundation)を立ち上げました。

その後、デザーテックの基本構想、科学的検討はドイツ航空宇宙センター(DLR)において2004年から2007年にかけて行われました。ドイツ政府は予算もつけ、連邦環境・自然保護・原子力安全省が後ろ盾となりました。

様々な再生可能エネルギーを生成するのに利用可能なリソースを分析し、EU-MENA地域の2050年までのエネルギー需要を予測し、欧州とMENA地域を結ぶ送電網構築が検討されました。

欧州12企業と再生可能エネルギー分野の科学者、専門家、政治家の国際的ネットワークが研究の中核を形成。2009年、デザーテック財団はミュンヘンに欧州関係企業群によるコンソーシアム DESERTEC Industrial Initiative(DII)GmbH を設立しました。

カーボンニュートラルにも関係するEU-MENA地域(欧州、中東、北アフリカ)での巨大プロジェクトとして知られており、コンソーシアムのメンバーにはヨルダン王子も入っています。

コンソーシアムによる提案によると、サハラ砂漠の 6500平方マイル(約1万7千平方メートル)の領域に集光型太陽熱発電システム、太陽光発電システム、風力発電システムを分散配置します。

これにより、MENA諸国の電力需要の大部分、及び中央ヨーロッパの電力需要の約15%を賄うことができると試算されています。また、2050年までに発電設備や送電網への投資は総額4000億ユーロになると見積もられています。

また、ローマクラブとヴッパータール気候・環境・エネルギー研究所(ドイツ)の報告によれば、このプロジェクトは2050年までにドイツ国内で24万人の雇用と、2兆ユーロ相当の電力を供給すると見込まれています。

電力供給を隣国フランスの原子力発電に依存しているドイツとしては、2050年に向けてこのプロジェクトに大いに期待をかけている姿が覗えます。

太陽光パネルに積もる埃を洗い流したり、タービン冷却のために水が必要であり、大量の水の消費は現地住民の生活用水確保を脅かす危険があると指摘されています。

その対策として、発電した電力で水を作る技術も研究されています。水を使わない洗浄技術や冷却技術も開発されており、こうした課題の解決手段が検討されています。

しかし、発電設備や送電網はテロリストの標的になる危険性があるほか、関係者はサハラ砂漠周辺諸国や北アフリカ諸国の政治的不安定性がプロジェクト進行及び欧州への安定的電力供給のリスク要因になると分析しています。

このプロジェクトの実現のためには、地理的にアルジェリアとモロッコの協力が必要になりますが、両国は西サハラの領有権や国境について合意していません。

技術的な障害よりも、欧州、中東、北アフリカ諸国の協力関係構築が、技術的な障害よりもハードルが高い状況です。

プロジェクト実現の鍵は、サハラ砂漠と欧州を結ぶ長大な送電網の構築。技術的研究は進んでおり、実用化を目指す高圧直流送電では送電ロスが1千km当たり3%、1万kmで25%まで縮小しています。


 次のページ2.電流戦争


関連する記事はありません。

 menu LINK