481

ステルス値上げ

事務所

ステルス値上げ

北京五輪が終わり、案の定、ウクライナ情勢が動き始めました。米国の動きを封じるため、中露は極東海域でも示威行動を繰り返しています。中東でもイランの背後で暗躍し、米国との核協議を頓挫させるでしょう。世界は今年の経済減速が予想されていましたが、国際情勢の緊迫でさらに下押しされる可能性が高まります。成長エンジン不在、インフレ、金融政策転換、国際情勢緊迫等、今年の経済の先行きは予断を許しません。

1.グリーンインフレ

2月17日、ジャカルタでG20財務相・中銀総裁会議が開催され、原油高騰等によるインフレ圧力抑制対策で連携することを確認しました。

インフレは各国で顕著になっており、1月の米消費者物価指数は前年同月比7.5%上昇と第2次オイルショック後の1981年以来、約40年ぶりの高い伸び。その背景にはいくつかの要因があります。

第1は当然、コロナ禍に端を発した世界的な金融緩和の影響。コロナ禍で苦境に陥った企業や個人の救済が主目的でしたが、緩和マネーの過半は投資マネーに転じています。

資金調達が容易になったため、世界全体の債務は膨張。日本円にして約2.6京円と推計。もちろん過去最大であり、対GDP(推計)比は250%強。その影響が消費者物価に顕れています。

第2に、景気回復と物流停滞。コロナ禍でも欧米中心に経済が回復軌道に乗る一方、人手不足、供給不足は継続。その結果、需給逼迫と物流停滞(ドライバー、トラック・船舶不足)が物価に影響を与えています。

中でも米国を入出港する船舶は奪い合い状態。とりわけ中国が多数の船舶を押さえていることなどが影響し、過去1年で輸送費は2.5倍に上昇。船種・航路によってはコロナ禍直後の2年前と比べて約8倍に跳ね上がっています。

第3にやはり中国による「爆買い」。とくに食料品に影響が出ています。例えば、中国の豚肉輸入量は2018年145万トンから20年528万トンに激増、現在は年間600万トンを上回るペースです。他の食材も同じであり、中国の所得向上も影響しています。

とりわけ餌となるトウモロコシ。食材、油やビールの原料、肥料や燃料にもなることから、産地米国でも中国が大量買付。価格はコロナ禍前の約2倍に上がっています。

第4に「グリーンインフレ」。これが意外に効いています。今やカーボンニュートラル、脱炭素は世界の潮流。脱炭素投資によるコスト高です。

化石燃料の開発・増産は停滞し、供給不足、価格高騰という悪循環です。グリーンインフレによって世界の物価は数%(おそらく最大3%)ポイント程度押し上げられるでしょう。

第5に国際情勢緊迫。ウクライナ、イラン、極東等、火種は尽きませんが、足許はロシアによるウクライナ侵攻。世界の原油需給のさらなる逼迫が予想されます。

ロシアのウクライナ侵攻が明確化した昨日(22日)のNY原油先物価格は一時96ドル台まで上昇。約7年半ぶりの水準です。

こうした状況は当然日本の物価に影響します。日本では消費者のデフレマインドの影響から小売価格への転嫁は容易でなく、企業物価が先行して上昇しています。

日銀が2月10日に発表した1月企業物価指数(2015年100)は109.5と前年同月比で8.6%上昇。指数水準としては比較可能な1985年9月以来、最高です。去年1年間の上昇率は過去40年で最大となっています。

とは言え、消費財価格にも確実に影響が出始めています。42年前の発売以来、10円に据え置かれていた子どもに人気の駄菓子「うまい棒」は12円に値上げ。たかが2円ではなく、何と20%の値上げです。

主要な原材料はコーン、大豆、植物油脂。コロナ禍発生直後の2年前と比較すると約2倍近い値上がり。包装資材・物流費・人件費上昇等も影響しています。

他の商品もちょっと調べてみました。ティッシュペーパー、小麦粉やマヨネーズ等の家庭用食品は3月から10%から15%値上げ。醤油は大手メーカーが6%引き上げ。値上げは14年ぶりだそうです。コーヒーは10%から20%値上げしています。

日本の物価にとって、さらに気になるのは円安。日本は食料もエネルギーも輸入に頼っていることから、円安は輸入インフレにつながります。

今回のインフレ傾向で「長年のデフレマインドが解消される」というお気楽な解説をするTVニュースや新聞を見聞きしますが、そういう問題ではありません。

輸入物価高と円安。ダブルパンチでインフレ傾向が加速しつつあります。今年は日本経済にとって深刻な展開になるかもしれません。


 次のページ2.ステルス値上げ


関連する記事はありません。

 menu LINK