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SWIFTとCIPS

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SWIFTとCIPS

ロシア軍がウクライナ国内の欧州最大規模ザポリージャ原発を攻撃し、占拠。既に常軌を逸していましたが、それを上回る暴挙を表現する言葉がありません。原子炉が被害に遭えば、チェルノブイリ原発の10倍の放射能被害に遭うと報道されています。ロシアを厳しく非難するとともに、戦争の早期終結を祈念します。ウクライナ国民に連帯の意を表します。

  1. SWIFT排除

ロシアによるウクライナ侵攻を受け、3月2日、EU(欧州連合)と米国はロシアの銀行7行をSWIFTから排除することを決定しました。

2014年、ロシアのクリミア侵攻に対して、英国がロシアをSWIFTから切り離すことをEU各国に働きかけた際、ロシアのメドベージェフ首相(当時)は「宣戦布告に等しい」と発言。SWIFT排除が如何に強い制裁措置であるかが覗えます。

しかし、資金規模でロシア2位のVTBバンクは対象にしていますが、最大のズベルバンクは含まれていません。米欧側が微妙な配慮をしていることには当然背景があります(後述)。因みに、2行の保有資産はロシアの金融機関全体の5割以上を占めます。

SWIFTとは「Society for Worldwide Interbank Financial Telecommunication」の略です。国際銀行間金融通信協会と訳されますが、銀行間国際送金のためのデータ通信システムを運営する協同組合です。

電子メールのような「メッセージ(支払指図情報)」を送り合う仕組みであり、貿易決済、投資、資金調達、送金等に標準的に利用されている金融インフラですが、実際の資金決済を行うものではありません。1973年発足、本部はベルギーの首都ブリュッセル郊外の森林保護区ラ・フルプにあります。

現在、200ヶ国以上の約1万1千の銀行、証券会社、証券取引所、その他金融機関が参加しており、1日の平均電文件数(つまり決済件数)は約4000万件、決済額は5兆ドル超。世界中の高額資金決済の約半分がSWIFTを利用していると推定されます。

参加のための出資ルールはシンプルです。送付した電文件数(つまり決済件数)に応じて出資します。つまり、たくさん利用するほど出資額が大きくなります。

日本には1981年に接続されました。現在、約200の銀行等が参加していますが、国内の決済システムや決済ネットワークとはセキュリティ上の観点から直接接続はしていません。

筆者が勤務していた日本銀行もSWIFTに参加しており、各国中央銀行が相互に保有している口座(中央銀行預り金)間決済指示に利用しています。資金決済の背景取引は、通貨スワップ取引、為替介入決済、国債取引等です。

SWIFTはもともと欧州の銀行間システムとして始まりました。やがて域外にも接続され、米国や日本等では国内金融ネットワークが構築済であったため、外為が関わる資金取引等に利用されるようになりました。

SWIFTはベルギーとEUの法制下にありますが、米ドル決済が中心のため、第三国間決済でも米国経由で送金されることから、事実上米国の強い影響下にあります。そのため、米国の意向でSWIFTが経済制裁の手段として活用されています。

参加銀行を特定している「SWIFTコード」正確には「BIC(Bank Identification Code:口座番号のようなもの)」の設定によって、排除や送金停止等の対応が容易にできます。

SWIFTを利用できなくなると、当該国、当該銀行は海外との送金や決済が極めて難しくなり、貿易や投資行動が制約され、大きな打撃を受けます。

SWIFTは2001年の「9.11」の際に米国FBIの捜査に全面協力したほか、過去、北朝鮮、イラン、ベネズエラ等に対する経済制裁に活用されています。

2012年、イランを排除した際には、同国GDP(国内総生産)成長率がマイナス7.4%になるなど、深刻な景気低迷に陥りました。

当初から米英両国がロシアのSWIFT排除に積極的でしたが、ロシアや中国と経済関係が深いドイツが難色を示していました。

しかしドイツは、運用開始間近であったロシアからのLNGパイプライン「ノルドストリーム2」の承認作業を停止するとともに、最終的にSWIFT排除にも賛同。ドイツが賛同に回ったことが、欧州諸国の判断を後押ししていますが、それでも上述のとおり、一定の配慮(ズベルバンクを除く等)がなされています。

既にロシアの銀行で預金者がATMに並ぶ等の混乱が生じています。輸出入の決済困難化、それに伴う経済貿易活動への打撃、他国の金融市場へのアクセス困難化、その結果としてのドル・ユーロ等外貨の調達難、海外での投資や資金調達、海外送金等の困難化、これら全てが影響してのルーブル暴落、それに伴うロシア通貨危機、そして国家破綻。こうした展開が米国の狙いです。


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