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タカ派か、ハト派か

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タカ派か、ハト派か

2.ダブル引締め

さて、4月28日の日銀政策決定会合で超金融緩和路線の継続が決まった一方、5月4日の米国FRB(連邦準備制度理事会)のFOMC(連邦公開市場委員会)は0.5%の利上げとともに、6月から量的緩和の縮小を始めることも決定。

FRBの政策金利変更は通常0.25%刻みであり、0.5%の利上げは2000年5月以来、実に22年振りです。3月のFOMCでは今年中に7回(0.25%)の利上げを行う見通しを示していましたので、そのうち2回分を実行したことになります。

約9兆ドル(約1170兆円)に達しているFRB保有資産をどのぐらいのペースで減少させていくかは、まだわかりません。

いずれにしても、金利と量の「ダブル引締め」。日米の金融政策の真逆の決定は、内外金利差を拡大させ、円安がさらに進む可能性が高いでしょう。

日銀の「指値オペ」は今年2月に導入されました。2月10日(木)に長期金利(10年物国債金利)が0.231%まで上昇し、2016年1月29日のマイナス金利導入決定頃の水準になりました。これを受けて日銀は10日夕刻、3連休明けの14日(月)に「指値オペ」を実施することを市場に通告しました。

日銀は2016年9月から翌日物金利をマイナス0.1%、10年物金利を「0%程度」に据え置くYCC政策を導入。「0%程度」の「程度」は±0.25%としているため、上限は0.25%。したがって、市場金利が上限を超えそうな場合には日銀の「腕力」を示す必要がありました。

しかし、2月10日の米国時間(米国市場)では、米長期金利が2%超えを伺う展開になった一方、日本の長期金利上限が0.25%と再確認されたため、円安が進行しました。

つまり、2月10日は「日米金利差拡大による円安」という現在の市場トレンドの始まりになったと言っていいでしょう。

日銀は「指値オペ」導入に先んじて、3ヶ月に1度公表する「展望レポート」の中で円安についての考え方を公表していました。

具体的には、今年1月公表の「展望レポート」の「BOX1(40頁から43頁)」の中で、「10%の円安はGDPを年間プラス0.8%押し上げる効果がある」と説明しています。

このレポートに先立ち、黒田総裁は1月18日の金融政策決定会合後の記者会見で「円安は全体として経済にプラスに作用」「悪い円安とは考えていない」と発言。以後、そのスタンスを継続していました。

2月10日の「指値オペ」告知以降、市場の金利上昇傾向と円安傾向、さらにはロシアのウクライナ侵攻長期化に伴う原油等の資源価格高騰から、市場と日銀の神経戦が続いていました。

3月28日午前、日銀は再び「指値オペ」実施を発表。ところが、長期金利は0.25%程度で推移し続け、2月に実施した「指値オペ」に比べると金利引下げ効果は乏しく、「指値オペ」の神通力は明らかに低下していました。

為替市場では1ドル125円台まで円安が進行。1日に3円以上下がったのは2014年10月以来。日銀「指値オペ」が円安を誘発しました。黒田総裁が相変わらず「円安は日本経済にプラス」という発言を繰り返していたことも影響しています。

4月入り後、筆者は参議院財政金融委員会で財務大臣に「日銀総裁の円安に対する発言は不用意であり、客観的な根拠(日本経済にプラスである根拠)について説明不足」であることを指摘。合わせて、その後開催予定のG7、G20で「為替は市場に任せる」という合意をすれば、内外金利差が拡大傾向にある環境下では「円安容認」と同義であることも指摘。財務大臣もそのことを踏まえてG7、G20に臨んだことと思います。

G7、G20後も円安傾向は継続。そうした中で、4月28日の日本の金融決定会合、5月4日の米国FOMCに至り、上述のような真逆の決定内容となりました。

円安傾向が持続した場合、ガソリン、日用品、食品等の値上げも続き、消費者物価は上昇し、個人消費に悪影響を与える可能性が高いと考えます。

物価上昇は黒田総裁が本来目指していた政策目標ですから、歓迎すべき展開のはずですが、それでも日銀の目標には達しません。

上述の「展望レポート」における物価見通しでは、2022年度は従来の1.1%から1.9%に引き上げられたものの、2023年度は1.1%に据え置き、新たに公表された2024年度は1.1%。エネルギーを除くベースでは、2022年度0.9%、2023年度1.2%、2024年度1.5%にとどまっています。

円安を気にして物価目標達成前に金融政策を方針転換するか、物価目標達成に固執して円安を放置するか。黒田総裁は10年も日銀総裁を務め、何をレガシーとして残すのでしょうか。


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