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タカ派か、ハト派か

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タカ派か、ハト派か

3.アベクロノミクス

日本の金融政策は非常に難しい局面を迎えています。黒田総裁の超金融緩和路線、YCCは持続可能性に問題があります。「指値オペ」を毎日続けると国債の玉(ぎょく)が少なくなり、極論的には買い上げる国債がなくなることも想定できます。

黒田総裁は2023年4月の任期満了に向けて、超金融緩和路線を貫徹するのか、軌道修正するのか。

個人的には、主要国の金融引締の潮流に逆らえず、日本の金融政策も修正せざるを得なくなると予想します。あるいは世界的な潮流を好機と捉えて「便乗」する可能性が高いと思います。

そのプロセスは、第1に長期金利操作の対象年限の短縮(現状の10年を7年、5年と徐々に短縮)、第2に長期金利操作の終了、第3に短期金利の引上げ(マイナス金利の終了)という順番でしょう。

修正の背景では、世界的な潮流に逆行できないだけでなく、エネルギー価格上昇を中心とする物価上昇が「悪い円安論」が影響します。

この背景を再確認するうえで、「アベノミクス」あるいは「アベクロノミクス」とは一体何だったのかが重要なポイントになります。

安倍首相、黒田総裁をはじめとする「リフレ派」は、日本経済低迷の原因はデフレであると主張しました。よって、インフレにして、デフレから脱却すれば、日本経済は回復すると考えたのです。

そこで上述の「2年・2倍・2%」を断行。日本円の総量である「マネタリーベース」は、「アベクロノミクス」開始前の2012年12月の132兆円から2022年3月の662兆円と5倍になりました。

「マネタリーベース」が増えても、それが市中に出回り、企業や家計に活用されなければ効果は出ません。

「マネーストック」がそれに該当します。2012年12月に1135.8兆円だったマネーストック(M3)は2022年2月には1532.4兆円と1.35倍です。「マネタリーベース」が約5倍になっていることを考えると、ほとんど増加していないといっても過言ではありません。

「マネタリーベース」が増えても経済成長は実現しませんでしたが、日本円の総量の増加は円安をもたらしました。アベクロノミクスは要するに円安政策だった総括してもよいでしょう。

目下起こっている「悪い円安」は、米国の金融引締、日本の金融緩和という真逆の金融政策、日米金利差拡大の結果です。

この項の最初の話に戻ります。黒田総裁は任期満了まで超金融緩和路線を続けるのでしょうか、それとも軌道修正するのでしょうか。

円安による輸入物価上昇と景気後退が同時発生して「スタグフレーション」的な状況になるリスクを鑑みると、黒田総裁としては後者を選択するしかないように思います。

円の購買力は50年前の水準まで低下しています。約10年前、1ドル80円割れの局面もあったことを考えると、円の価値は半減しています。

かつて、円安は輸出国家日本にとってプラスというのが定説でした。しかし、コロナ禍は日本が輸入依国家であることを明らかにしました。

製造業を中心とする輸出企業は既に現地生産に切り替えています。米国に輸出する製品は米国で生産しています。取引はドルで行われます。円相場が変動しても、影響はかつてほどではありません。

つまり、現在の日本の経済構造は「円安」に弱くなっています。そんな中、「アベクロノミクス」を続ける黒田総裁は4月28日に「異次元緩和継続」を宣言し、「指値オペ」を毎日実施すると決定したのです。

アベクロノミクスの下でも日本経済は成長しませんでした。GDP成長率、実質賃金、どれも横這い程度です。

「結果」と「原因」を取り違えています。この点は国会やメディアで繰り返し指摘してきましたが、「リフレ派」が受け入れることはありませんでした、しかし、もはや明々白々です。

日本経済低迷は、経営者が人件費削減で収益増を図ることを「経営手腕」と錯覚したこと、成長しないのは社員や技術者の働き方や技術力に問題があると錯覚したこと、政府も教育・科学技術開発・新しいビジネスモデル創造のできる「人づくり」こそ要諦であることを理解しなかったこと、国民の実質賃金が増える経済構造には程遠くGDPの最大シェアを占める消費が低迷し続けたこと、 等々が本当の「原因」です。

デフレは「結果」に過ぎません。「今からでも遅くない」などと根拠のない楽観論を言うつもりはありません。「間違った政策を続けていても状況は変わりません」ので、軌道修正が必要です。

(了)



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