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KARGU2

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3.KARGU(カルグ)2

AIを搭載し、機能の一部を自動化した兵器は既に存在し、実戦配備されています。以下、無人兵器やLAWSの分類と現状を整理します。

第1は「半自動型兵器」。人間が攻撃対象を設定し、攻撃開始も人間が指示しますが、途中過程や攻撃そのものが自動化された兵器。様々な兵器が実戦配備されていますが、LAWSには含まれません。

例えば、巡航ミサイル。発射後に目的地まで自動飛行しますが、目的地設定と目標破壊の最終判断は人間が行う「半自動型兵器」です。

第2は「自動型兵器」。この段階もLAWSには含まれないという定義で議論が進んでいます。「自動型兵器」は人間ではなく、プログラム(広義のAIも含む)が攻撃目標を認識し、攻撃を開始します。

但し、攻撃はプログラムに設定された範囲内であり、「自動型兵器」ではありますが「自律型兵器」ではありません。プログラムを作成するエンジニア(人間)が攻撃目標及び攻撃の判断基準を設定しているという整理です。

「自動型兵器」も既に実戦配備されています。例えば、イスラエルの無人攻撃機「ハーピー」。自爆型ドローンとも呼ばれ、攻撃対象の地理的情報等を入力して発射。遠隔操作なしに対象地域上空に到達し、旋回しながら標的を捕捉。接近して自爆します。

ロシアの無人戦闘車両「サラートニク」。機関銃、カメラ、レーダーを装備し、標的を識別して攻撃します。これが先週紹介した「ウラン9」の原型です。

米国の無人艦船「シーハンター」。海上を数ヶ月自律航行して、敵の潜水艦を探知・追尾します。韓国の哨兵ロボット「SGR」。北朝鮮との軍事境界線沿いに配備されており、敵兵士の動きを自動感知し、射撃します。

第3は「自律型兵器」すなわちLAWSです。「自律型兵器」には「メタ目的」が与えられます。「メタ目的」とは、より高次元または抽象的な目的のことであり、「この地域を確保せよ」「戦況を打開せよ」といった命令になります。

「自律型兵器」は「メタ目的」を達成するために、状況や環境に対応して、どのように行動するかを自ら考え、最終判断します。「メタ」とは「超越した」「高次の」という含意の古代ギリシャ語の接頭語です。

LAWSが複数連動する「集団自律型兵器」の場合、仮に全面戦闘状態になると、定義上、人間は全く制御できません。「ターミネーター」で「ジェネシス」が意思をもって戦争をエンドレスに継続するようなケースです。

もっとも、第2の「自動型兵器」も制御不能になる危険性があります。「自動型兵器」が複数連動する「集団自動型兵器」もプログラムが想定外の事態に遭遇して暴走する危険性が指摘されています。

システム取引中心になっている金融証券市場で、プログラム売買が暴走して暴落が起き、市場閉鎖せざるを得なくなるような事態と一緒です。金融証券市場では実際にそうした事例が発生しており、フラッシュ・クラッシュ(瞬間的暴落)と呼ばれます。

金融証券市場は閉鎖で事態を収束できますが、兵器のフラッシュ・クラッシュの場合、一方がシステムを止めても、相手が止めない限り、再び戦闘開始となります。そもそも、システムを止められない場合も想定されます。

こんなことを現実に懸念しなくてはならない状況となり、科学者や企業の間でもLAWSに反対する動きが顕現化。2018年7月、国際人工知能学会はLAWSの開発・生産・取引・使用を行わないことを宣言し、米グーグル傘下のAI開発企業など160社、2400人のエンジニア等が署名しました。

こうした話を聞くと、人間社会の未来にも希望が持てるような気がしますが、現実の世界は希望が持てるような方向には進んでいません。

昨年12月17日、コロナ禍で中断していたCCW締約国会議(120ヶ国参加)での議論が再開されましたが、LAWSの開発や使用制限について合意に至らず、対策強化に努めるというほとんど意味のない結論で終わりました。

昨年3月公表のLAWSに関する国連安保理専門家パネルの報告書の中に、2020年3月にリビア内戦で人類史上初の完全LAWSが使用された事実が記されています。

トルコの支援を受けていたリビア暫定政府軍が戦場に投入したトルコSTM社製の「KARGU(カルグ)2」というドローン型LAWSです。攻撃目標の選定、攻撃決定、実行を自ら判断したということです。

しかし、そこに至るまでの間にもLAWSに近い兵器が投入されてきました。その端緒はやはり無人攻撃機です。

2002年12月、スティンガー(携帯式防空ミサイルシステム)で武装した米軍のMQ1プレデターがイラク軍のロシア製MIG25と交戦。史上初の無人機と有人機の交戦です。その後はイラク側も中国製無人攻撃機を導入しました。

2014年のリビア内戦では、暫定政府側のトルコ製無人攻撃機「バイラクタルTB2」とリビア国民軍側の中国製無人攻撃機「翼竜」が交戦。史上初の無人機同士の空中戦です。

ここまでは無人攻撃機のオペレーションに人間が関わっていましたが、上述の2020年3月に使用された「KARGU(カルグ)2」は発進後に人間は関与していないということです。

ロシアのショイグ国防相は「魂なき軍隊」と命名したLAWSによる部隊を編成する方針を表明しています。その一端が昨年秋の軍事演習「ザーバド2021」で明らかになり、先週お伝えした「ウラン9」の動画が撮影されました。

もっともロシアの「ウラン9」よりも米中が先行しています。2007年に米軍がイラクに配備した「SWORDS」はM249軽機関銃を登載した無人ロボット車両。これをAI制御すれば「ウラン9」と同じです。既にそうなっていると考える方が現実的でしょう。

2016年、イラク軍もIS(イスラム国)との戦闘に中国製77式重機関銃とロシア製ロケットランチャーを装備した中型無人武装ロボット車両「AIROBOT」を投入しました。

LAWS専門家のひとりであるMIT(マサチューセッツ工科大学)のマックス・テグマーク教授は「技術は軍事政策の議論よりもはるかに早く発展している」と警鐘を鳴らしています。

プーチン大統領は核兵器の使用も辞さない姿勢を示して米欧日を中心とした反露諸国を威嚇していますが、LAWSの使用状況についても注視すべきでしょう。

なお、日本でも有人戦闘機とドローンが編隊を組む計画が具体化しています。母機となる戦闘機1機につき3機のドローンを編隊化し、空中戦での支援・援護に当たらせる構想です。

(了)



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